深層雨林

記憶が薄れてゆく前に

谷原菜摘子展「うきよの画家」によせて

三界のすべてを踏んでわたしたち何処もあそびば彼処もねぐら 家なんか無ければ無いでステップも武器を持つ手も軽やかになる 貫くようにすべてが見たい うきよにも同じ痛みを知る星よあれ (2021.05.29) www.ueno-mori.org

「Void / Valve / Volume」によせて

光あれ光が色をつくるのならば透明もまた色なのでしょう歩いた分だけ時が経つなら時間はきっと距離なのでしょう 遠ざかるほど広やかに遠ざかるほど鮮やかに遠近法は書き換えられてわたしの過去は今めのまえで空間をひらく光であった 空虚の器を光がみたすさ…

親の死に目にリモートで会う

自分がこんな経験をすることになるとは思っていなかったな、という淡々とした記録です。 コロナ禍で面会が制限されるのは、コロナ感染での入院患者ばかりではない。院内での感染を起こさないために、患者の受け入れにだって最大限の注意を払っているだろう時…

「眠り展:アートと生きること」によせて

うわまぶたの裏側としたまぶたの裏側とに別々の風景が映っているまばたきをするたびにふたつの世界はおそるおそる触れ合い境界を引くはじけるように離れ、また触れ合う まぶたとまぶたが眠りに融け合うあいだ景色と景色もゆっくりと互いを侵食し合ううずまき…

KAAT EXHIBITION 2020 「冨安由真展|漂泊する幻影」によせて

かつてわたしたちだったいつか、わたしだった昨日わたしだったものたちが暗闇にひそむ 暗闇のひそみで沈黙しているしんだけものたちの気配ひっそりとまぎれて息を詰めてみてもしんでいないわたしのための場所はここにはない しんだけものも ひなたに連れ出せ…