「眠り展:アートと生きること」によせて
うわまぶたの裏側と
したまぶたの裏側とに
別々の風景が映っている
まばたきをするたびに
ふたつの世界はおそるおそる触れ合い境界を引く
はじけるように離れ、また触れ合う
まぶたとまぶたが眠りに融け合うあいだ
景色と景色もゆっくりと互いを侵食し合う
うずまきって、ねじれる時もほどける時も渦を巻いているね
とぷんと聞こえる水の音
わたしが身をひたしているのは眠りなのか、それとも
ずるずると手脚も融けて
まぶたの裏側に渦を巻く
うわまぶた、あなたは何を見てきたの
どこを歩いて、何に触れたの
したまぶた、あなたは
やがて赤い光が水平に走り、朝が燃え出す
宙にひらかれるうわまぶたに
水中に沈むしたまぶたに
どんなわたしを残してきたのかわたしは知らず
ただ、次の眠りへと泳ぎはじめる
(2021.01.30)
国立近代美術館
国立美術館コレクションでみる「眠り」のかたち
https://www.momat.go.jp/am/exhibition/sleeping/